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僕の伴侶は蜷局を巻く
第10章 10
午前中に官舎に訪れたキキと昼食を済ませ別荘に送った帰り道に寄ったのである。
「いったい何をしているの、お母さん?」馬車から下りて母の抱擁を受けながら、ミハルは尋ねた。
「ちょっと枯れた花を摘んで、見栄えを良くしていたのよ」ハーリーはしばしの間、娘をじっと見つめた。「会いに来てくれて嬉しいわ。さあ、中へ」
「私も帰ってきたかったのよ。ちょっと馬車に買い出ししちゃった物があるし、日が落ちる前に戻らなきゃいけないから長くは、居れないけど」ミハルは母が麦わら帽子と長靴を脱ぐのを待った。「でも、庭の手入れは鵜飼(ウガイ・使用人)がやってくれるでしょ? そのためにお金を払っているんだから」

ハーリーはボブカットにそろえた黒紫の髪を耳にかけ、肩をすくめた。「断ったのよ。ひどい時期だけ来てもらうことにしたの。さあ、座っておしゃべりでもしましょう。あなたたちの記事が載っている新聞は全部、取っておいたわよ。写真もステキなのが仕上がっていたわ。本当にいい式だったもの。私のお友達ときたら、いまもその話でもちきりよ」

ハーリーはミハルの腕を取り、家の中にいざなった。
「鵜飼を解雇したのね…?」ミハルは冷静に聞いた。「お金をあるはずよ。それに呼び戻して数日で…」
「私も残念だと思ったわ。あれだけの目にあったんだから、節約は続けた方がいいというのが、お父さんの考えなの節約した分を投資にまわしたいんですって。いざというときのためだってね」

ミハルの目に青い戦慄が光る。「お父さんらしくないわね。お母さんの負担が多すぎるし、以前から気にしていたのよ」
「大丈夫よ。その点は。お父さんは浪人(無職だから協力してくれる)だもの」ハーリーはキッチンに入った。「さて、紅茶にしますか?ユウキはやっぱり砂糖なしのミルクをちょっと入れたコーヒーなの?」
「あの人は勝手に飲んでるからわからないわ。機会があったらそう作ってみるけど、紅茶をお願い。…アマテラ(使い魔)はいるの?」
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