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僕の伴侶は蜷局を巻く
第10章 10
ユウキは貝殻を手に取った。電話をしようとは思ったが遅い時間になってしまっていた。いずれにせよ、お嬢様が気にするとは思わなかった。今日は僕といても、ちっとも楽しそうじゃなかった。いや、昨日か。

ユウキはキッチンを見まわした。これだけ用意したからには、相当の手間をかけたに違いない。寝室へ向かうと最小限に居間の明かりがついている。僕のため?それとも初めての家で眠る自分のため?もれる明かりから、ミハルの顔と枕に広がる星空が見えた。ユウキは顔をしかめ、近づいた。枕の上の不自然な位置に、影ができている。泣いていたのか…。

ユウキは長い間その場で、じっと妻の寝顔を見つめていた。僕の美しく、複雑きわまりない妻。母さん(実)に見せてあげたかったな。

あのディナーは、何を意味するのだろう。停戦の申し入れ?新たな作戦?
ひとつだけ言えるのは、あれだけ手間をかけたからには、目覚めたお嬢様は、ヒステリーを起こす。父上(バサラ)の話をするのが、ますます難しくなった。
…!。化粧をしたまま涙に濡れて眠る妻を母さんに見せたらもう一人最愛の女性を泣かすところだったな。



聞き慣れない電話の音が鳴り響き、ミハルは眠りを破られた。奇妙な夢だった。喪失感と悲しみに満ちた夢。それでいて、たくましい腕と熱に包まれるのを感じた。けれど眠りに落ちたときと同様、目覚めたときもひとりだった。



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