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僕の伴侶は蜷局を巻く
第11章 11
「私には夫はいないわ…」
バサラは娘の顔を上に向けた。「彼のところへ戻りなさい。わしの弱さのために、自分の将来を台なしにするな。強引な結婚だったが、わしにはユウキが良い夫になるとわかっていた。尊敬できる相手でなければ、お前を手放したりはしないよ。彼はわしが育てたんだ、わし以上の漢(おとこ)にするために」
「お父さんはユウキを憎んでいないの?」
「憎んださ…戦場でヤツに至近距離からガーランドで容赦なく撃たれたときは殺そうと思ったさ。だが、彼は偉大だった。わしを逃がすのに血と涙を流しながら説得してきた。内戦だったんだ。日本最後の日本人同士の戦いでなければ…。わしもシュラもユウキも死んで、お前と母さんは身体を売るはめになってた。悔しかったよ、華奢なアイツにいい様にやられた。鬼でなければ死んでいただろう」
ミハルは涙を押しとどめようと、唇を噛んだ。混沌と化す戦場で父を逃がすのに必死だった夫を私は殺人鬼と何度も言い放ってしまった。どれだけ心を傷つけてしまったのだろう。人間でありながら鬼として育った夫…。
「なんと言えばいいの?」
「何も言う必要はない。悔い改めなければいけないのはわしだ。すべて戦争の影響のせいにしたわしなんだ。唯一の救いは、お前が意志の強い立派な男性と結婚したことだ。彼ならば過ちなど犯さないだろう。ユウキのそばへ行くんだ」
ミハルは父の手を握りしめた。そう簡単にいくなら、どんなに嬉しいことか。ユウキははっきりと言った。『お嬢様こそ、戻ってくるような無様な醜態を晒すな』と。そして私は返事をした。『何があっても戻らない』と。
彼のもとへ帰りたいなら、無様な醜態を晒すより仕方がない。
問題は、どうやってもどればいいのか……。
バサラは娘の顔を上に向けた。「彼のところへ戻りなさい。わしの弱さのために、自分の将来を台なしにするな。強引な結婚だったが、わしにはユウキが良い夫になるとわかっていた。尊敬できる相手でなければ、お前を手放したりはしないよ。彼はわしが育てたんだ、わし以上の漢(おとこ)にするために」
「お父さんはユウキを憎んでいないの?」
「憎んださ…戦場でヤツに至近距離からガーランドで容赦なく撃たれたときは殺そうと思ったさ。だが、彼は偉大だった。わしを逃がすのに血と涙を流しながら説得してきた。内戦だったんだ。日本最後の日本人同士の戦いでなければ…。わしもシュラもユウキも死んで、お前と母さんは身体を売るはめになってた。悔しかったよ、華奢なアイツにいい様にやられた。鬼でなければ死んでいただろう」
ミハルは涙を押しとどめようと、唇を噛んだ。混沌と化す戦場で父を逃がすのに必死だった夫を私は殺人鬼と何度も言い放ってしまった。どれだけ心を傷つけてしまったのだろう。人間でありながら鬼として育った夫…。
「なんと言えばいいの?」
「何も言う必要はない。悔い改めなければいけないのはわしだ。すべて戦争の影響のせいにしたわしなんだ。唯一の救いは、お前が意志の強い立派な男性と結婚したことだ。彼ならば過ちなど犯さないだろう。ユウキのそばへ行くんだ」
ミハルは父の手を握りしめた。そう簡単にいくなら、どんなに嬉しいことか。ユウキははっきりと言った。『お嬢様こそ、戻ってくるような無様な醜態を晒すな』と。そして私は返事をした。『何があっても戻らない』と。
彼のもとへ帰りたいなら、無様な醜態を晒すより仕方がない。
問題は、どうやってもどればいいのか……。