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好きと言って
第2章 ふちは瀬になる
「梨乃ちゃん!」

後ろから聞こえた声に覚えがあって振り向けない。
麻子さんだ。
たった1回、食堂で会っただけなのに、私の耳は麻子さんの声を忘れない。
忘れたいのに。
気づかないふりをして早々に立ち去りたいのに
麻子さんは走ってきて私の肩を叩いた。
ほっといて欲しい・・・・

「追いついた~。梨乃ちゃん早い~。
私歩くの遅いんだって。春人がよく言ってたの。
私と歩くと速度を合わせるのが大変なんだって」
「・・・・・」
「でも春人優しいからついつい甘えちゃうんだよね」
「・・・・・」

この人は、私に何をしたいんだろう?

「梨乃ちゃんにお願いがあるの」
「なんでしょう?」
「就活ね。私と春人、回る会社が結構かぶるのよ。
一緒に行こうって言っても春人は梨乃ちゃんに悪いからって
一緒に行ってくれないの。でも初めての会社とか心細いじゃない?
梨乃ちゃんが良いって言ってくれれば春人と一緒に行きたいのよ」

この人は・・・・
何を言ってるんだろう?
就活なんか普通は一人でするもんじゃないの?
初めての会社って・・・・みんなそうなんじゃないの?
なんでわざわざハルト先輩と行かなきゃいけないの?

じっと目を見つめて何も言わない私に
麻子さんはさらに追い討ちをかけてきた。


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