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可愛いヒモの育て方。
第6章 いざ、温泉旅行へ!

 麻人はさっきまで電話していた場所に、ちらりと視線をやった。その目を私に向ける。
 後ろめたい気持ちもあって、私は麻人からつい目をそらしてしまった。
 携帯に向かって発された、彼の冷たい声が蘇る。拒絶。
 ――私もいつかあんなふうに、拒絶される日が来るのだろうか。

「もう、何してんすかー」

 ふいに麻人が笑った。

「部屋覚えてないとかどんだけ方向音痴なんすか。もうすぐ二五になるんだから、しっかりしてくださいよ」
「うっせ。年関係ないしっ」

 いつもの調子で言われ、私もつられてそう返す。
 間違いなくバレているはずなのに、麻人はそこには触れてこなかった。

「女将さん、夕食持ってきちゃいますよ。早く戻りましょ」

 麻人が歩き出す。気付くと私はその手を掴んでいた。
 麻人が振り向き、驚いたように目を見開く。だけど、自分の行動に驚いたのはむしろ私の方だった。

「ごめん……」

 手を離し、とりあえず謝る。何に対しての謝罪なのかもよくわからなかった。
 麻人は数秒私の顔を見つめ、突然吹き出した。
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