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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
だけど、ディスプレイに何度も表示されていた名前は――。
「――何してんすか?」
ふいに背中で響いた声に、私は体を硬直させた。部屋のドアに背を向けたまま座っていた私は、麻人が戻ってきたことがわかっても、振り返ることができなかった。
麻人の携帯を、勝手にいじって留守電を聞いてしまったせいもある。麻人の声はどこか渇いていた。
まるであの、温泉旅行で電話をしていた時みたいに。
拒絶。たったのその二文字が、毒のように私の脳内を駆け巡る。
「人の携帯勝手に見て。まったく悪趣味っすねー。またお仕置きされたいんすか?」
からかいを含んだ麻人の声は、いつもより少しだけ声のトーンが下がっていた。
振り返れない。
「これでわかったでしょ? 俺が友梨香さんちに来る理由」
留守電が終わった。私は麻人の携帯を、ベッドの上に落としていた。あと一つ残っていた留守電を、聞きたいとすら思わない。聞かなくてもわかる。麻人を求める悲痛な金切り声が鼓膜の奥にこびりついて離れなくなってしまう。
私は呆然と、まだ光り続けるディスプレイを見つめる。そこに表示されている名前は――『お母さん』。