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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
あの時も、麻人は感情の読み取れない目をしていた。
私はふるふると首を振った。違う。だって私は、同情するほど麻人のことを知らない。麻人の母親から鬼電が来て、感情的にひたすら麻人を求めて。その理由も、そうなった経緯も、麻人がその状況をどう思ってるかも。何一つ知らないのだ。
麻人の手が、私の顎の辺りに触れた。びっくりして、つい体を強ばらせてしまう。だけど麻人は私の顔を、再び上げさせようとしただけだった。別に乱暴でもなんでもない。
「違う」
嗚咽をかみ殺して、やっとそう言葉にする。
「だって私……あんたに同情するほどあんたの事情、知らないもん」
必死に絞り出した声は、思ったよりかすれていた。
言葉にした途端、自分の言葉に胸をえぐられたような気がした。そうだ知らない、なんにも。
どれだけ同じ部屋にいても、体を何度も重ねても、こうやって体の一部が触れる距離にいても、麻人の気持ちを汲み取れるほど、麻人自身を知らないのだ。涙でぼやけた麻人の顔を見ていると、麻人自身が実態のない幻影のように感じられて酷く遠く感じた。