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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
なじるような口調にも思えた。平然と、話をそらそうとしているのも。それが酷く不快で、私は何も答えなかった。
麻人が立ち上がり、近づいてくるのが気配でわかる。私は麻人に背を向けたまま、深くうつむいた。
「なんなら一緒に観ます?」
揶揄するように、私の顔を覗きこんでくる。その動きが、ぴたりと止まった。
目を見開いて、私の顔を見つめた。
「……なんで、泣いてんすか?」
気付かれたとわかった瞬間、必死にこらえていた涙が頬を伝って落ちた。一度気を緩めるとダメだった。せき止めていた涙は堰を切ったように溢れ、すぐに目前の、麻人の顔も歪んだ。
麻人を見上げ、言葉を探す。だけど、なんて言っていいのかわからず、何も喋れなかった。湧き上がる感情を、どんな言葉にしていいのかがわからなかった。言葉の代わりに零れるのは品のない嗚咽ばかりで、とっさにまたうつむいた。
「……それって、俺に対する同情的な何かですか?」
ぽつりと落とされた麻人の声は、表情のない声だった。感情が読み取れない、声。媚薬で仕返しされた時を思い出した。