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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
麻人は私をちらりと一瞥し、困ったような顔で首をかしげた。
「家事をほとんどしなくなったり、一日中イライラする日があったり、他人から見れば、些細なことですけど。母さん、だいぶマメで、洗濯物もきちんと畳むし、掃除も毎日するし、料理もちゃんと作る人だったんです。そういうの全般だらしなくなって。あと、イライラしてる姿も父さんがいる頃はほとんど見たことなかったんですけど、単身赴任になってから、よく見るようになりました」
またコーヒーを一口飲む。麻人はわずかに目を細め、ひとりごちるように言う。
「あの頃は別に、劇的な変化があったわけでもなかったんすよねー。でもやっぱ、なんかおかしかったけど。父さんが戻ってくれば普通だったし、相変わらず母さんは姉ちゃんによく愚痴ったりなんやりしてたから。ただ、姉ちゃんが結婚して家を出てから、また様子がいろいろ変わって」
「どうに?」
「独りになるのを、嫌がるようになったんです」
私は軽く目元を拭った。涙が乾いて、変な感じがする。
「俺が出かけるたびに、帰る時間を聞いてきたり、メールや電話がよく鳴ったりしてました」