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可愛いヒモの育て方。
第11章 依存
「さっきの留守電みたいな?」
「……あそこまで酷くはなかったんすけどね。俺が学校やバイト先から帰ると深酒してたり、何日か家を空けたまま帰ってこなかったり、ひたすら父さんを罵って泣いてたり、いろいろ酷くなっちゃって。だけど落ち着けば、いつもの母さんだし。発作的なものなんだと思います」
麻人の言いまわしは柔らかく、冷静で、どこか淡々としていた。だからなのか、切羽詰まった感じはしない。
だけど麻人の母親の様子を想像すると、それは明らかに『普通ではない』状況だった。もし自分の母親が、同じような状況に陥っていたら。そんな状況を、間近で見ることになったら。そう思うと心が痛む。
「どっからが、ビョーキなんすかね」
ふいに麻人が呟いた。
「やっぱ病院とか、連れてった方がいいですよねー」
「……辛くないの?」
「え?」
麻人が顔をあげ、振り向いた。
「自分のお母さんをそういう病院に連れてくのって、辛くない? 母親に、心の病気なんだよって告げるの……」
また目頭が熱くなった。声が震えないよう努めたけれどダメで、慌てて口を噤んだ。