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可愛いヒモの育て方。
第5章 熱

 予想はしてたけど、やっぱり。

「熱あるじゃん」
「……え、マジ?」

 昨日薬飲ませておけば良かったと、若干後悔した。
 私は救急箱から体温計を取り出し、彼に渡した。

「まだ微熱くらいだと思うけど、計って」
「はい」

 彼が体温計を入れている間に、私はちゃっちゃと着替え、歯磨きと洗顔をして化粧の準備に取りかかった。

「どうだった?」
「七分ちょい」
「風邪っすねー旦那」
「……みたいっすね」

 まったく、人んちで風邪なんか引くなよ、と思うけれど、責めたところで病気じゃ仕方ない。

「講義は?」
「ないです」
「家にお母さんいないん?」
「はい」
「一日中?」
「……確か」

 私は頭を悩ませた。病人を誰もいない家に帰すのも気が引けるし、そもそも微熱とはいえ熱があるのに、車を運転させるのは危ない気がする。

「私、今日休みなんだけど、午前中はどうしても店行かなきゃなんさ。部長が偵察に来るから」
「はい」
「でも二、三時間で終わるから、午後病院連れてくよ」
「……いいですよ、そこまでしてもらわなくて。もう帰りますから」
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