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可愛いヒモの育て方。
第5章 熱
チェックを終え、店長と軽い面接に入った。時間は一時間ほど。特に大きな失態はなかったらしく、面接もすぐに終わった。
上機嫌な部長に、店長もほっと安堵の顔を見せる。
私は隙を見て、麻人に短いメールを送った。
『大丈夫? この調子だと昼前に帰れそう』
『大丈夫です。了解でーす』
すぐに返信が来たことにほっとし、私は携帯をしまい店長たちのところに戻った。部長が店をまさに出ていこうとしているところだった。
このまま何事もなく終わるだろうと思ったが、こういう時に限って、上手く行かなかったり。
突然、店の電話が鳴り響いた。パートのおばさんが取りに向かう。すぐに蒼い顔をして戻ってくると、子機を握りしめ、言った。
「本社にクレームがいったみたいです!」
ああ、まさかこのタイミングで。多分そこにいた全員が、空気の読めないそのパートさんを呪ったはずだ。せめて部長に聞かれないようにとの配慮をしてほしかった。そうすれば、処理にこの人が関わることはなかったのに。
店長がすぐさま子機を受け取り、店の奥へと消える。
私は部長を見た。さっきまでとは一点、鬼のような形相をしていた。
ごめんよ麻人。
長い一日を覚悟せざるをえなかった。