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かわいい狼くん
第18章 動き出す時間
しばらくの沈黙の後、
顔を上げた心の口が開く
『あ、アルくん…あのね?』
「うん?」
アルは首を傾げながら優しい笑みで
心の言葉を待つ
不安な気持ちが溢れ出し
心の視界が滲む
『あの…私、最近…ね』
言いかけた所でリビングの扉が開く
「お風呂空いたよ〜
……ここ、ろ?なんで泣いて…」
自分が涙を流している事にハッとして
心は咄嗟に俯く
そして心の隣に座っているアルを
彰斗は睨みつける
「アル…なんかした?」
怒りの籠った低い声で彰斗が問いかける
『あ、彰斗くん!
アルくんは手当てしてくれただけなの!』
「…手当て?」
『私…コップ割ってしまって。
それで…痛くて』
そう言った心の手には痛々しく
赤く滲んだ絆創膏が貼られていた
「ちょっ…大丈夫なの?!」
彰斗はすぐに駆け寄り
心配そうに心を見る
『もう平気だよ!
ごめんね、余所見してたら落としちゃって…』
するとアルが立ち上がり、
「心、あとは僕が片付けておくから。」
「え、でも…!」
「大丈夫だよ。」
ポンと頭に触れてニコリと笑って行ってしまった