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~散花~
第13章 房中術
「失礼いたします」
呼びかけられて目をやると、地味な下級女官服を身につけた女性が両手をついていた。
「このたび玉蘭さまのお世話を仰せつかりました、鶯燕館の女蔵人でございます。以後、お見知り置きくださいませ」
「ありがとう。よろしくお願いします」
「お済みでしたら御膳をお下げいたしますが」
「ええ、もう結構です」
無表情な女蔵人に、玉蘭は緊張しながら応答した。
後宮の女人は、どうしてこうも腹の内を読みにくい能面ばかりなんだろう……。
人知れずため息を落とす。
「御湯殿が焚き上がったとのことでございますゆえ、よろしければお使い下さいませ。では私はこれにて…」
手際よく膳の懸盤を捧げ持つと、女蔵人はあっけなく退出してしまった。
(湯殿まで案内してくれるわけではないのね…)
けれど体を洗えるのはありがたい。玉蘭は厨子から着替えを出すと、うきうきしながら部屋を出た。