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~散花~
第22章 水面下
「秀瑛殿下、お戻りなさいませ……おや、お召し物がひどく汚れていらっしゃいますな」
出迎えの内官が、秀瑛の衣裾にこびりついた泥や雑草に気づいた。
「すぐに内侍にお召し替えの支度をさせましょう。お湯殿へはお見えになりますか」
「いや、着替えが済んだら鳳凰殿へ参る。先触れを出しておいてくれ」
「……今からでございますか? 既に子の刻、帝は選女の夜伽を受けていらっしゃる時分かと…」
「…………」
秀瑛が無言で内官を見据えた。
射すくめられた内官は、みるみるうちに青ざめる。
「はっ…も、申し訳ございませぬ。ただちに、仰せの通りに…」
こけつまろびつ、御殿の奥へ消えていった。
22章 完