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~散花~
第29章  入内

(はぁ~~お腹いっぱい…)

呂栢が退出してから点心を五つたいらげ、ようやく玉蘭は箸を置いた。

それでもまだ、料理は幾皿も余っている。

「第一夫人さま、よろしゅうございますか」

女性の声。

「はい、どうぞ」

「膳房から参りました。よろしければ食後の茶果をご用意いたしますが…」

「お願いするわ」

腹ごなしに、お茶が飲みたい。

「では御膳をお下げいたします」

「ええ、そうね……あ、でも…」

「何者かに、お下げ渡しくださいますか?」

もちろんだ。捨ててしまうなんて、もったいない。でも誰にバトンを渡せばいいのだろう…。

そのとき、玉蘭の脳裏に浮かんだのは何かと気遣ってくれた芙蓉の優しい笑顔だった。

その名を告げると、膳房の女官は一瞬目を瞠いたが黙って御膳を下げる準備を始めた。

(喜んでもらえるといいな)

そんな能天気なことを考えながら、玉蘭は女官の働く姿を眺めていた。



     29章 完




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