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~散花~
第30章 母と息子
鳳凰殿。
御饌の間――
皇太后は、食後の煙管をうまそうに吹かした。
麒麟の背を模した大台盤を挟み、正面に座す皇帝――蒼牙が手ずから母に茶を淹れる。
「今宵は久々に母上と夕餉を共にでき、うれしゅうございました」
「それが帝のご本心であれば、母も嬉しい」
「何を仰いますか、本心でございます」
「そうであろうか…」
皇太后が悲しげに目を伏せた。
「わらわは帝に疎まれておるような気がしてならぬ…」
「そのような仰せ、母上らしくありませぬな。なぜわたくしが母上を疎んじるのでございますか」
「先ほど夕膳を下げ渡した相手の件じゃ…」
拗ねた上目遣いで、皇太后は息子を睨んだ。