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~散花~
第33章 覚悟
「ん? どうした」
「いえ…あの…」
特に何か用事があったわけではなかった。
「あの…」
ただなんとなく、もう少し言葉を交わしていたかった。
とても恐ろしい思いをした後だからだろうか。
とても恐ろしいことをした張本人なのに?
よくわからない…。
「その……」
「どうした?」
秀瑛は辛抱強く待ってくれる。
「どうして……わたし、なんでしょうか」
「え?」
「どうしてわたしを、選んでくださったのでしょうか」
たまたま出会い、采女は嫌だと我が儘を言い、説教され、誓わされ――
たったそれだけの関わりのみで、どうしてわたしを秘密とやらの共有者にしようと思えたのだろう。
わたしだって、ついうっかりどこかで秘密を曝してしまわないとも限らないのに。
(そうしたら、わたしもあの女官のように消されてしまうのだろうか…)