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~散花~
第5章 寝物語
「この松風殿はね、先の帝の妃たちにあてがわれた仮御殿なの。
帝が崩御し、新しい帝が即位あそばされれば、後宮女人も一新される。
先帝の妃は、皇后と国母以外、例外なく後宮を追い出されるわけ。
それでも、服喪の1年間はここに居られるのだけどね。
その間に、己の身の処し方を決めなければならないの。
なぜなら、喪が明けたらただちに取り壊されるのが松風殿の習わしだから。
私たちに許された行き先は四通り。
一つは実家に帰る。
もう一つは、自分が産んだ皇子か皇女の屋敷へ移る。
そして三つ目が、斎女となり死ぬまで亡き帝の陵堂で菩提を弔い続ける。
私には……子供はいないし、帰るべき実家もない」