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~散花~
第47章 魔物の栖
「い…いただきますわ」
一礼し、芙蓉はカップに手を伸ばした。
カチャカチャカチャ――
震えて、うまく取っ手を掴めない。
玉蘭もカップを手に取り、優雅に口へ運んだ。
「芙蓉さま…」と、朱佳が小声をかける。
「だ…だいじょうぶよ…いただきますわ」
カチャカチャカチャ――
震える手でソーサーごとカップを持ち上げる。
カチャカチャカチャ――
カップの中で紅茶が波だち、ソーサーへこぼれていく。
カチャカチャカチャ――
カップを口に近づけた。
カチャカチャカチャ――
カップの縁に口をつける。
上唇を濡らす液体…口の中に入ってきて…舌が紅茶の甘さを知覚し……
その瞬間、
「いやあっ!!」
ガシャン!
芙蓉はカップを床に投げ捨てた。