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~散花~
第48章 散花
玉蘭は聞き流すことができなかった。
「畏れながら申し上げますが、紅梅宮の方々が妬んだり牽制しあったりするのは、みなひとえに帝のご寵愛を待ち望むがゆえにございます」
顔をあげ、蒼牙を見据える。
「女は、情や人との繋がりを心の拠り所にしたいと願う生き物ですから、時に必死になるあまり、理性を超えた振る舞いに走ってしまうこともあるんです」
「予のせいだと言いたいわけか」
蒼牙は薄い笑みを浮かべた。
「そうではなく…ただ……いま少し、陛下のお情けを紅梅宮に向けていただくことはできませんか…」
「そなたは、予の好みをすべて知った上でそれを言うのか」
「陛下のご事情は存じております。でも…」
閨を共にすることはできなくても、せめて――
「お声をかけていただき、髪を撫でていただくだけでも、女は心が潤うものなんです…」
玉蘭はぽつりと訴えた。