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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
 ぺらぺらとよく回る舌を切りとってやりたい。眼の前の男に憎しみすら憶えながら、小紅は唇を噛みしめた。
「なあ、一度で良いから、味見させちゃくれねえか? 先刻見たばかりのお前の大切な場所に俺のを入れてやるぜ? 俺なら、この世の極楽を何度でもお前に味あわせてやれる。どうだ、今夜、いや、今からでも良い。家の中は親父の眼が光ってるから、どこか外で待ち合わせよう。出合い茶屋ででも―」
 言いかけた男の頬が鳴った。
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