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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
 だが、準平はいきなり小紅の膝裏を掬い抱き上げた。口には布が押し込まれ、小紅の悲鳴はくぐもった低い呻きにしかならなくなる。
 彼は庭に面した障子戸を開き、そのまま下に降りた。草履を突っかけると、大股で歩き出す。途中で庭の落ち葉を掃いていた丁稚がちらちらとこちらを窺っているのが遠目に見えたが、小紅を運ぶの夢中になっているらしい準平にはまったく眼に入っていないようであった。
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