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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
「叔父さま、私」
涙を浮かべた小紅の瞳を見て、武平は胸をつかれたようであった。
「済まないね、本当に済まない。お前にもしものことがあれば、私は兄貴に申し訳が立たないよ」
武平は幾度も詫びた。武平は兄の仁助に言わば、煮え湯を呑まされたはずである。その借金を肩代わりし、残された娘を引き取った。それだけでもはや、仁助に対して申し訳ないも何もないはずなのに、律儀に小紅を守ろうとしてくれている。