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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜
「若旦那さまにぶたれました」
「若旦那さまに?」
 そこで、初めてその理由に思い至った。太吉は準平に小紅が連れ去られるところを見ていた。機転を利かせた太吉が武平に知らせに走ってくれたからこそ、小紅は陵辱されずに済んだ。
 この身が無事だったのは太吉のお陰であった。しかし、準平にとってみれば憎らしい邪魔者でしかない。が、準平は確かに太吉の姿を見ていなかったはずだが―。
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