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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿
 祝言は翌春を待って挙げることに決まった。具体的な日どりまではまだ決めていないが、話し合いでは弥生の初め頃になるのではということで落ち着いた。
 栄佐はそのときは少し不満げだったけれど、徳市に肩を叩かれ、
―男子たるもの、少しは待つことも憶えねばならんぞ。
 と、諭され不承不承頷いた。もっとも、その後で徳市が栄佐にだけ聞こえる声で囁いたのを小紅は知らない。
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