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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
 気合いを入れて針を動かし始めてしばらく経った頃、表の腰高をほとほとと叩く音がした。こんな夜に来客なんて、と、警戒心がむくむくと湧いてくる。
―まさか、準平さんが?
 小紅は真っ青になり、ぶるっと身を震わせた。あの夜の恐怖がまざまざと甦る。
 と、聞き憶えのあるまったく別の声がかかった。
「おい、小紅。もう寝ちまったのか?」
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