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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
「こんなものしかできなくて」
丼の上には厚揚げが一枚、出汁をたっぷりと滲み込ませて煮たものだ。
「いやいや、貧乏役者にはご馳走だよ。うん、うめぇ」
早くも汁を啜りだした彼は、白い湯気の立つ蕎麦を見て幸せそうな表情だ。
「折角のお休みなのに、申し訳ないわね」
「何の何の。男っつうのは美人に頼られて悪い気はしないんだから、気にするなって」
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