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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
「迎えにきたぞ。小紅、一緒に帰るんだ」
小紅は夢中で首を振り、栄佐の背後に隠れた。
怖くて堪らない。あの雪の夜の記憶が一挙に甦ってきて、心が爆発しそうになる。
もう、あんな辛くて恥ずかしい想いは二度としたくない。
栄佐がおもむろに口を開いた。
「ちょっと待ってくれねえか。兄さんよ、どう見ても、この娘はあんたを怖がってるようにしか見えないんだがな。あんたは本当にこの娘の亭主なのかい」