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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
 その長い橋には今日も大勢の人だかりができていた。こんな天気の良い日、しかも顔見世興行が行われるのだから、当然だ。
 小紅は両国橋を息せき切って渡った。
 長い長い橋を一心に駆ける。ただ愛しい男の許へ向かって。
 この瞬間、小紅はもう二度と後戻りできない橋を渡ったのかもしれない。それは栄佐という男へと続く橋でもあった。
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