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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
 栄佐がぼんのくぼに手をやった。
「そりゃそうだよな。どうせ、難波屋に大枚ちらつかされてるんだろうし、そう簡単には諦めねえだろう」
 彼はしばらく思案顔だったが、すぐにポンと手を打った。
「よし、こっちに来な」
 栄佐に手を引かれ、小紅は通路をまた走る。
「栄佐さん、どうするつもりなの?」
 走りながら訊くと、彼は不敵な笑みを浮かべた。 
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