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マネキンなカノジョ
第6章 カノジョと砂浜
 
「いやあ、いい天気になったなっ」

 運転席に居る先輩の声。

「…なったなっ」

 誰も相槌打たないから、仕方なく言った。

「……何で…アンタ……う……平気なのよ……うぷっ………」

 後部席の横で、美奈ちゃんが青い顔をしてる。

「……………」

 助手席の男は既に撃沈。

 ドアに寄り掛かるように伸びている。

「…根性…」

「…アンタから聞くとは思わなかったわ…うぷ……」

 失礼な美奈ちゃん。

 暗闇の中で山道を歩いてきた事を滔々と話したかった。

 でも、まるでド○○もんみたいに真っ青な顔をしてたから、言わないでおいた。

 助手席の男は青を通り越して白になっていた。

「二人とも情け無いなっ。明日香ちゃんを見習えよっ」

「…見習え…」

「アンタの運転が酷すぎんのよっ!
 明日香も調子乗ん……うぷっ………」

「…叫ぶから…」

 美奈ちゃんもとうとう、ドアに体を預けてダウン。

 仕方ないので、流れる景色を楽しむ事にした。

「…ねぇ、明日香ちゃん?」

 楽しむ前に、運転席から話し掛けられた。

「…なに?」

「ちゃんと持ってきてくれた?」

 ルームミラーをチラッと見ると、先輩のニヤケ顔が見えた。

「…言われた通り…」

 更ににやける先輩。

「それじゃあ……」

 片手で運転しながら、器用に小さな紙袋を寄越してきた。

「…なに?…」

「明日香ちゃんに用意したヤツだよ」

 先輩のニヤケ顔から、手元の小さくて軽い紙袋に視線を落とした。
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