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マネキンなカノジョ
第8章 カノジョと………
 
「うそうそうそうそ…」

 優しく諭すような声。

 アイツと同じ声。

 そんな声で言われたって信じない。

「明日香ちゃん、いい加減目を覚ませ」

 先輩の言う事なんて聞かない。

「明日香…。健二は亡くなったって……分かってるでしょ?」

 美奈ちゃんの嘘つき。

 健二は目の前に居る。

「明日香がアイツを好きだったのは知ってたよ」

 他人事みたいに言うコイツが信じられない。

「明日香ちゃんが悲しんだり、苦しんでた時、いつもアイツが居たのも知ってるよ」

「小さい頃はいつも明日香たちは一緒だったしね」

 今だって傍に居る。

「あの時の事故さえ…無ければ……」

 事故なんてない。

 何も無かった。

 だから、アイツは目の前に居る。

「俺と美奈が…あの時飛び出さなきゃ……」

「…何…言ってるの?」

 みんなの話が分からない。

 ただ、健二好みの女になって、健二に愛されたいだけなのに、みんなの話が分からない。

「健二を忘れさせようと…。そのしっぽも下着もホントは俺が勝手に……」

 先輩の言葉も分かんない。

「バカ兄貴…。そんなんで、明日香の気持ちが変わる訳っ…」

「うるさいうるさいうるさい」
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