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マネキンなカノジョ
第1章 プロローグ
「どうしたの?」
怪訝な面持ちで尋ねた女性に、男は目を見開く。
「だ、だってさっき、男がっ」
思わず声を張り上げる男。
その後ろを通過する人々は何事かと視線を向けるが、其の儘通り過ぎていく。
「あぁ。…ちょっと、色々教えてくれるって言うから……」
「…こんな場所で、何を?」
表情を余り変えずに話す女性に、今度は男が怪訝な面持ちになる。
「……色々……かな?」
「………」
なかなか答えない女性に、男は思案顔へとなっていく。
「……まさか……」
「ん?」
思い当たる節に考えが纏まった男の言葉に、女性は短く返す。
「明日香……。左手挙げて」
「こう?」
男の言葉に、素直に左手を挙げる女性・明日香。
「じゃあ……次は腕組みして」
「こう?」
撓わな胸を持ち上げるように胸の前で腕を組む。
「じゃあ………ちょっとスカート捲ってみて」
「こうでしょ?」
男の言葉に何の躊躇いも無くタイトミニの裾を両手で掴み、ピンク色のショーツを露わにさせる明日香。
「うわっ! ちょっ、ちょっとっ!!」
自ら指示を出したにも拘わらず、焦って明日香の手を裾から離した男。
「うわ…。露出プレイか何かか?」
「昼間から…すご………」
「撮影とかじゃないの?」
「あの姉ちゃん…綺麗なのにエロ女優とかか?」
背後を通る人々の囁きを耳にして、男は明日香を隠すように路地に立ち塞がった。
「言われた通りにしたじゃない」
明日香は男が慌てた意図が分からず唇を尖らせる。
「何でも言う事聞いちゃダメだって、いつも言ってるだろっ!?」
「でも、やれって………」
「場所とか考えてるっ!? 無茶な事も平気でやったろっ!?」
「やって欲しかったんでしょ?」
「無茶振りだって思わないの? こんな場所でパンツ見せろとか、いつも俺が言うとでも?」
「今日はそういう気分なのかな…と」
「はぁ………」
暖簾に腕押しの様相になった問答に男は頭を抱えて嘆息する。
「とにかく……。誰でもはいはい言う事聞いちゃダメだって………」
「んー…。取り敢えず…聞いておく…」
男の言葉に、明日香はいまいち納得がいかずに軽い返事をするだけだった。