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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
「…はあ?」

 思わず声が張る。

 何事かという、周りの客の視線が突き刺さる。

「いや…俺も『何で?』って思ったんだけど断れなくて…」

「アンタも明日香の事、言えないんじゃないのぉ?」

 渇いた笑いを見せる男に、ジトーッと半眼で見詰める。

「ま、まぁ…。美奈だって悪い話じゃないだろ?」

「そ、そりゃぁ……」

 取り繕うように焦って言葉を吐き出す男。

 顔を背けながらも、横目でチラチラと視線を向ける。

「もしかしたら…アタシにもチャンスが……。あわよくば…あんな事とか………」

 語尾にいくにつれて顔が赤くなって、真面に話せなくなる。

 頭の中では、それはもう、口では言い表せないくらいに刺激的な光景が繰り広げられていた。

 昼間から定食屋で想像するような事じゃないと顔が熱くなる。

 しかし、今吐いた言葉を僅かでも聞いていたら、目の前の男の気持ちにも何かしら変化があるかもと、横目で男を見てみた。

「早く食べないと時間無くなるよ?」

 ズズーッと何食わぬ顔でうどんを啜っていた。

「……………」

 コイツは携帯小説でもよくある、鈍感主人公体質である事を実感した。

「……ま、話してみるけど…」

「頼むね。俺、相変わらず外回りばっかで、明日香とあんまり話せないからさぁ」

 それはそれで好都合だった。

 しかし、それを表に出すようなヘマはしない。

「仕方ないから気にしないで。
 アンタはアタシに任せればで安心しょ?」

 いつもの態度をとりながら、さりげなく自己アピール。

 しかし、眼前の男は強敵だった。

「うん…。……っ!! ゴホッ…ゴホッ!」

 頷いた途端に勢い良く啜ったうどんに咳込んで、アピールの存在を有耶無耶にされた。

 半眼が四分の一眼になった。


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