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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
「…という事で頼むよ」
すまなさそうに吐き出された言葉。
しかし、その本人は、パソコンの画面から視線を外す事も無かった。
「…良いですよ」
無表情に言葉を吐き出した課長に、淡々と返事をする。
「資料はそこにあるから」
そこってどこ?と思いつつ、課長の机の上を見る。
封筒やら書類の山で、相変わらず汚い。
「……………」
「分からない? それだよそれっ」
パソコンを見た儘、焦れったそうに言うが、分からないものは分からない。
人差し指を顎に当てて、首を捻るが見当がつかない。
「…あ……。ゴメン。こっちだった」
視線を机の上にさ迷わせていたら、反対側の書類ケースから封筒を取り出してきた。
「…課長?」
「悪かった、悪かったからっ。
頼むから任せたよっ」
半眼で冷ややかに言えば、流石に課長も顔を向けて謝ってくる。
差し出された封筒を受け取ると、ペコッと一礼して自分の席に戻る。
「アンタ…また頼まれ事?」
直ぐ様、美奈ちゃんの呆れた声が聞こえた。
「…お使い…。他の会社まで………」
「はぁ…。この前も頼まれて、戻ってきたの九時近くだったわよねぇ?」
「…遠かったし…迷った…」
「なぁんで、方向音痴にお使いさせんのかしらねぇ」
頬杖を着きながら、ジロッと見てくる。
「…仕事だから…仕方ない…」
「アンタが断らないからでしょ?
他に暇そうな女の娘居るじゃないのよ」
部屋の片隅で談笑している女性社員たちに視線を向ける美奈ちゃん。
「……美奈ちゃん…も?」
「あ、アタシはっ………」
突っ込んだら、机の上に開いてあった雑誌を慌てて隠した。
「ホント、アンタは何でもはいはいって……」
「…行ってくる」
また小言が始まりそうだから、身支度を済ませて逃げた。