この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
狂人、淫獣を作る
第3章 飼育
(4)
※ ※ ※
リナが着実に被虐に溺れていくまでの物語を聞いていた源は、後藤の話が一段落すると感嘆の声を上げた。
「さすが見事なものですね……奴隷として着実に調教を進めた上に、大学合格にまで導いてやったとは、彼女にとってもはや後藤氏は人生の恩人と言っても過言ではありませんね」
「過言だ」まんざらでもないニヤニヤした笑みを浮かべつつ後藤は言う。
「しかしその間、一人目の奴隷はどう扱っていたんですか?」
「定期的に調教はしていたさ。もちろんリナに夢中だったから数はめっきり減ったがね……淋しそうにしていたが、身分をわきまえているからな。けなげに我慢していたよ」
「しかしですね……その二人目で後藤氏は相当部分満たされたわけですよね? そうなると一人目など、義務とまでは言いませんが調教がルーティンになり下がって、不要な存在にはならなかったのでしょうか?」
「マユもリナも、例えば悶え方一つにしろ、絶頂の様子一つにしろ、喘ぎ方一つにしろ……別の女だからそれぞれにしか持っていない違いもある。その違いを楽しむのも悪くないものだと気づいた。リナにしても、奴隷としての到達点はまだまだマユには及ばなかったし、調教をしているうちにマユに情が移った部分だってある」
「ほう……! さしもの後藤氏であっても情が移るわけですね! 邪魔な感情など排除して、捨てる時は問答無用で捨てるのではと思っていましたが」
「ははは! ひどい言われようだな、それはいくらなんでも失礼じゃないか? 俺とて鬼じゃあない。一応感情のある人間だぞ?」
「……これは失言でした」源は綺麗に剃り上げている頭を下げた。
「おいおいおい! 頭を上げなって……それくらいのことで機嫌を損ねるような小物じゃないつもりなんだがな。情というものを無用の長物として女をモノ扱いするSMだって、存在するじゃないか」後藤は笑いつつ熱燗を猪口に注ぎながら言った。
源は頭を上げたものの、後藤を見ずに将棋盤を目をやったまま、静かに人差し指の先で盤上をゆっくりとした動きで叩くのを繰り返している。
心なしか、鋭い眼光がサングラスから突き抜けてきているようにも、見えた。