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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

各国のマスコミにすら隠し通せていた「フィギュア世界女王の醜聞」を、かの国の皇子が抱える諜報機関?は調べ上げてしまったというのか。

空恐ろしさを覚え身震いしそうになったが、次にフィリップが零した本心に耳を疑い、それどころじゃ無くなった。 

「だが、逆に安心した」

「え?」

(安心……?)

椅子に腰かけたまま首を傾げたヴィヴィに対し、ソファーの背に深く凭れ掛かったフィリップは、じいと小さな顔を見つめて続ける。

「法的な血縁関係のある実兄とは結婚出来ない、かつ、相手は子供もいる妻帯者。いつかはヴィーの目が覚めるだろうって、高を括っていた」

「………………」

「悪かったよ」

「……別に、貴方が謝る必要なんて、これっぽっちもない」

だって、そう思うのが当然だから。

100人に問えば100人が答えるだろう。

『妻子のある実兄との関係が、未来永劫続く訳が無い』と。

「思ったより、別れるのに時間がかかったけれどね」

ガシガシと頭を掻きながら吐露する男に、女はぎゅっと椅子の肘置きを握り視線を落とす。

「……実の兄と関係を持つ女、なんかに、よく好意を持てるね……?」

「う~~ん。まあ、正直なところ、動揺はしたけれどね。でも、なんとなく、ヴィーの気持ちも分かる……というか」

「……え?」

「うちは両親が揃っている時期が短かったし、異母兄弟はいても一緒に暮らすことも、表立って交流を持つことも難しかった。寂しい幼児期や思春期に、心から信頼できて、でも親ではない人間が傍にいたら、懸想してしまうのも あり得ることなのかなって」

そういえば、いつだかダリルが言っていた。

モニャコ公国の大公であるアルベールⅡ世は女癖が悪く、フィリップには異母兄弟である9歳上の姉(庶子)、2歳下の弟(庶子)がいる――と。

ヴィヴィと匠海も異母兄弟――だった。

もう一方的に絶縁したので、過去形だけれども。

「しかも、男の俺から見ても、充分に魅力的な男だと思うし」

「……? バイ?」

「いや。女性だけ」

「………………」

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