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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
そして、
ドバイの地で双子の兄と一緒に見つめた、ペルシア湾に沈みゆく見事な夕日――
その想い出が途端に懐かしくなったヴィヴィが、クリスを連弾に誘えば、双子の兄は二つ返事で妹の隣に腰かけた。
生まれた時から顔は瓜二つなのに。
大人になった今では、白黒の鍵盤に並んで置かれた二人の掌は、明らかに男と女のものだった。
クリスの大きな掌を「楽器演奏にはもってこい」と羨ましがるヴィヴィに、
「ヴィヴィの手は、綺麗だから、それで良いんだよ……」と、どこまでもシスコンぶりを発揮する双子の兄。
ドレミファ#ソ
ドレミファ#ソ
冒頭の音を互いに片手で奏で合い「懐かしいね」と、二人だけの記憶を共有し。
右に座ったクリスの右掌に、ヴィヴィの左掌を重ねるように置き、双子は曲を奏で始めた。
元々は、ピアノを習い始めた子供が練習するその曲は、とても簡単で。
その初々しさを表した、純粋で穢れ無き音色を一節弾ききったクリスは安堵した様に、左隣に座る妹の座面に使わない左手を付いた。
それは5年前と同じ。
互いの半身を触れ合わせながら奏でるのは、昔と同じ、だったのに。
何故か己の右半身に触れ合った、クリスの身体を意識してしまって。
まるで後ろから抱き込まれているようで。
らしくもないミスタッチをしたヴィヴィは、伴奏をしていた左掌をバツが悪そうに鍵盤から降ろした。
途端にしん――と静まり返る防音室。
そこは衣擦れの音ひとつ生まれない、無の空間に成り下がったのに。
上からの視線を痛いほど感じたヴィヴィは、おずおずと右隣のクリスをふり仰ぐ。
『…………。そんな目、で見ちゃ、駄目だよ……』
双子の視線がかち合った瞬間、哀しそうに瞳を揺らしたヴィヴィが、小さな声で窘める。
けれど、
『……どんな、目……?』
無自覚なのか、それとも、妹自身に言葉にさせたいのか。
珍しく意地悪な問いを寄越したクリスに、ヴィヴィは目の奥がじんと痺れるのを感じていた。
『……――っ』
駄目。
駄目だよ。
だって、
その視線は、かつて見覚えのあるもの。
血の繋がった妹を見守るにしては、あまりにも熱を孕んだもの。
嫉妬と独占欲をチラつかせた、危うさが滲んだもの。
それは以前、
もう一人の兄が、自分に向けていたものと酷似していて――