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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

「捨ててなんかいない」

 次いで掛けられた言葉に、自由を取り戻した両腕を降ろしながら、ヴィヴィは注意深く兄を見上げる。

「お前が勝手に、そう思い込んだだけだろう」

「―――っ 何、言って!」

 兄のあまりの言い分に、かっとなったヴィヴィは食って掛かる。

「俺はヴィクトリアを手離した覚えはないよ」

 確かに。

 匠海は一度も『終わり』とも『別れる』とも『飽きた』とも口にしなかった。

 けれど、あの状況では言われたも同然ではないか。

「か、勝手なこと、言わないで……っ 私が、私が今までどれだけ苦しんだか、知らないくせにっ」

「確かに、お前の気持ちはお前にしか解らない」

 妹の言い分に理解を示した兄。

「じゃあ、もう解放して……っ」

 長い睫毛を湛えた目蓋が、ぎゅうと力を込めて閉じられる。

 もう、兄の顔なんか見たくない。

 一生 会いたくない。

 目にする度に、思い出さされるから。

 匠海の狡さ。

 己の弱さ。

 その他にも気付きたくない事を、沢山知らしめられるから。

「でも、俺はずっと見ていた」

 流れてもいない涙を拭う、目の下を辿る兄の指先。

「だからお前がどんなに苦しんできたか、知っている。ずっと見ていたからね」

 見ていた――?

 一瞬、頭の中に浮かんだその疑問は、すぐに立ち消えた。

 リンクの両サイドの壁に2台ずつ、計4台設置された旋回型のカメラ。

 その日のレッスンを終えた直後、双子や主要選手宛てに自動的に送られる画像解析データ。

 やはりそれと同様のものが、リンク所有企業の出資者の長である、匠海の元にも届く様になっていたのか。

「渡英してからの3ヶ月……。時折、深夜のリンクで泣いて蹲っていたのも。自分を殺したくて『LULU』を必死に滑っているのも、全部見ていた……」

 執拗に瞳の下を辿る指に、しぶしぶ目蓋を開けた先、

 自分を覗き込んでいたその人は、広い肩を落とし、懺悔の感情を瞳に宿していた。

「全て俺のせいだ――」

 匠海のその言葉には、いささか驚いた。

 自分を裏切った後でも、ずっと愛を囁き続けたこの兄に、

 後悔や苦悩なんていう感情は、皆無なのだと思っていたのに。

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