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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
ダイニングの扉から姿を現したのは、他でも無いクリス。
いつも通りの無表情のまま、ダイニングとリビングを突っ切り、
もう窓の先は暗闇が広がるサンルームの定位置に、だらんと座り込んだ双子の兄。
一方、ヴィヴィの顔は、みるみる色を無くしていく。
(き……聞かれた……。今の、絶対に聞かれたよぉ~~っ)
大理石の床の上、オフホワイトの巨大ビーズクッションに埋もれているクリスの姿に、
「あ……、ど、どうしよう……」
薄い唇から、弱々しい自問の声が漏れる。
クリスは真行寺兄弟の事情について知らないのに、絶対に聞かれた。
小さな頭の中で、必死にどうフォローするかを考えていると、
「たぶん、クリス君は知ってたんじゃないかな?」
そんな、まさかの太一の問いに、視線の先にいるクリスは静かに振り返り、こくりと頷いて見せた。
「え? ど、どうして……?」
戸惑いを隠しきれないヴィヴィに、
「真行寺家のパーティー、で、招待客が話してるの、聞いたし……。前から、情報として、入ってきてた……」
そうネタ証しをしてきた双子の兄に、ヴィヴィはきょとんとした。
同じ場所に自分もいて、全く気付けなかったのに。
クリスは何らかの情報網を通して、そんな個人的な事まで知っていたのか。
「困ったことに、結構有名なんだよ。一部、経済界ではね」
太一のそのフォローに、ヴィヴィは何とも言えない表情を浮かべる。
「はあ……」
(てか、私、お兄ちゃんの同伴で、何度も経済界の集まりに顔を出してたのに……。情報に うと過ぎじゃないですか……orz)
常に会合の場等でアンテナを張り巡らせていたつもりだったのに――と、どうでも良い事で落ち込んだヴィヴィ。
けれど、それも一瞬で。