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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
『Inch by inch...
―少しずつ……』
肩から鎖骨の上を、指先でトントンと辿り、
『Step by step...
―ゆっくりと……』
そうしてその先、
指でクイと摘まんだのは、黒く細い肩紐。
『Mile by mile...
―渡り歩くの……』
薬指を噛みながら、背を後ろへと倒していけば、
『Man by man.
―“男” から “男” へ』
胸の上に重ねられた両の掌は、
微かな膨らみの上を辿りながら、ゆっくりと腰へと降ろされていく。
『Bye-Bye, Mein Lieber Herr.
―さよなら、あたしの愛する男』
どこか哀しみを滲ませた歌声の中、前へと伸ばした両腕の先、閉じた扇子の端と端を両手で握り、
後ろへ後ろへ肩を入れながら、バックへ滑り始める。
『Farewell, mein Lieber Herr.
―ごきげんよう、あたしの愛する男』
前へと向き直り、助走のスピードを上げ、
『It was a fine affair,
―素敵な恋だったわ
But now it's over.
―だけどもうおしまい』
飛び上がったのは、正面で大きく開脚した、高いバレエジャンプ。
『And though I used to care,
―ずっと思っていたの
I need the open air.
―あたしには外の世界が必要だって』
着氷後の流れの中、脚を前後に開け、
両のトウを180度開きながら真横へ滑り、
『You're better off without me,
Mein Herr.
―あたしがいないほうが あなたは良くなる
あたしの愛する男』
イナバウアーで、後ろへと大きく仰け反らせた細い背筋。
『Don't dab your eye, mein Herr,
―驚かないで、あたしの恋人
Or wonder why, Mein Herr.
―わけは聞かないで、あたしの恋人』