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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      



 そして ここにも、

 迷える子羊、が1匹――。

 一応この小説の主人公である、篠宮 ヴィクトリアが選択したのは、

 ③起こさない様に、兎に角 敵前逃亡する

 だったのだが――




 
「な……っ な、な……っ!?」

 薄暗いホテルの一室。

 シングルベッドの隅っこから、這い出んとするヴィヴィの手首は、

 件の “元彼” に、あっさり掴まれてしまっていた。
 
 驚愕の形相で振り返り、「な」を連呼する妹に、

「「な」……が、何?」

 若干眠そうに瞬きしながら、問うてくる美青年。

「~~~っっ な、何で “お兄ちゃん” が “ここ” にいるのっ!?」

 そう小声で喚きながら、軽く握られた手首の拘束を振り解く。



 とうとう、

 プチストーカー 

 から、

 真正ストーカー

 に昇格しちゃった?

 エロ変態絶倫ロリ王子
 
 改め、

 エロ変態絶倫ストーカー王子

 にしてやろうかっ!?

 え?

 エロ変態絶倫 “ロリ” ストーカー王子

 じゃないのかって?

 だって 私、21歳だから、

 さすがにもう、ロリコンではないでしょう?



 そんな下らない事を思い浮かべながら、ベッドに横たわったままの匠海を、鋭い眼光で睨み付けていたヴィヴィ。

 肩肘を突き横向きになった匠海は「ふわわ……」と一つ、大きな欠伸をし、

「覚えていないのか?」

 そんな、思わせぶりな問いを寄越してきやがる。

「な……何、を?」

(な、なななな……何をしたんですか、私はぁ~~っ!?)

 恐々 尋ね返すヴィヴィに「ふう……、困った子だね」と前置きした匠海。

 切れ長の瞳の上、緩やかな弧を描く片方の眉を跳ね上げ、続ける。

「昨夜、ヴィヴィから電話を貰って、駆け付ければ……。玄関扉が開けられた途端、お前から飛び付いて来たんだぞ?」

「……う、嘘、つけぇ……」

 口では そう匠海の説明を頭ごなしに退けながらも、

 頭の中では、必死に昨夜の事を思い出そうと試みてみる。



 自分が匠海に電話をした?

 ホテルの玄関扉を自分で開けた?

 んでもって、

 匠海に飛び付いたとな?


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