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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

「離してもいい、けれど」

「な、何……?」

「どこか触れていたい」

「……はぁ……?」

 昔の “お兄ちゃん子のヴィヴィ” なら絶対に発しなかったであろう、ぞのぞんざいな返しに、

「髪でもどこでもいいから、ヴィクトリアに触れていたい」

 全くめげる様子の無い匠海は “妹で無いヴィヴィ” に触れることを望んでいた。

「………………」

(昨日の夜、充分 触れ合ったでしょうが……。まあ、覚えてないけど……)

 兄が主張した、

 “自分からした電話・熱烈なハグ・兄に縋り付いたまま爆睡”

 そのどれも記憶に無い、ヴィヴィなのだった。

「……咽喉、乾いた……」

 話題を変えようと、ぶすっと零してみる。

(こちとら飛行機で飲んだドリンク以外口にしてないんだぞウェルカムドリンクくらい飲ませろやいこのやろお)

 先程、見惚れるほど優雅にシャンパンを口にしていた兄を、恨めしそうに半眼で見上げれば、

「アルコール?」

 シャンパンクーラーに冷やされたボトルに視線を走らせた兄に、昨夜の醜態が脳裏を過ぎった妹は、

「……紅茶がいい、デス」

「はいはい」

 くすりと笑んだ匠海は、ようやく抱擁を解いてくれたのだった。

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