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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
そんなこんなで、双子が松濤の篠宮邸に戻れたのは、24時前だった。
両親からの労いの言葉もそこそこに、時差ボケも相まり 疲れ果てていた双子は、3階の私室へと引っ込んだのだが。
そこで初めて、ヴィヴィは匠海からの不在者着信に気付いた。
「あ……。やっちゃった……」
今から30分前に電話をくれていたのだが、如何せん くたびれていたヴィヴィは、
移動車に乗り込んだ途端に爆睡してしまい、気付けなかった。
咄嗟にリダイヤルしようと、スマホを弄った細い指。
しかしそれは、CALLボタンを押すには至らなかった。
「………………」
灰色の瞳が その色を濃くし。
細い肩に諦めを滲ませながら、バスルームへと入って行く。
以前の自分ならば、絶対に掛け直していた。
けれど、その行為は “今の自分” には、赦されない事だった。
纏っていた服を脱ぎ捨て、本日溜め込んだ疲労を癒やすべく、白いバスタブの湯に身を委ねる。
そして その縁には、いつ着信があっても出られるように、スマホが置かれていた。
髪を洗い終え、ボディーソープをスポンジに泡立てる頃になって、
ようやく、スマホが反応を示し。
しかし、それは匠海からの着信では無く、メールだった。
『Title:お疲れ様
Letter:
ジャパン・オープン、会場で観ていたよ。
今まで散々、動画でFS観てきたのに、
やはり試合会場で観ると、全く印象が異なった。
壮観で力強くて、とても圧倒されたよ』
「やだ……。観に来るなら一言、言ってよぉ~~」
思わずスマホ相手に突っ込んだヴィヴィは、何だか恥ずかしさが込み上げ、頬が火照ったが。
メールには、まだ続きがあった。
『今日は疲れているだろうし、
帰りも遅いだろうから、
明日、会いに行くな?
というか、
今日、ヴィクトリアに会ってしまったら、
確実に離してあげられなくなる。
愛してるよ、おやすみ』
「……は、離してあげられなくなる――って……っ」
更にポウっと頬を染めたヴィヴィは、薄い唇を窄め、嬉しさを噛み締める。