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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
「野辺山合宿とは小学校3年生(8)から中学1年生(12)の中から、有望な新人を集めて行われる日本スケート連盟主催の合宿でしたね? ブーたれていたとは、どういう事ですか?」
何も知らないアナウンサーのその追及に、
「何でか分からないけど、毎回到着してからの数分、ヴィヴィは唇尖らせて ほっぺ膨らましてて」
そう説明した真瑚は目の前に座るヴィヴィに対し、当時を思い起こさせる様に 限界まで唇を尖らせ頬を膨らませて見せる。
「…………っ」
(そ、そんなには、唇尖らせてなかったもんっ た、たぶん……)
金の頭をぶんぶん横に振り、否定するヴィヴィ。
「ね~。周りの子は「この合宿で連盟の目に留まって、国際大会に派遣して貰うんだ!」って虎視眈眈 狙ってたっていうのに」
すっと通った瞳を柔らかく細めたトモエにまで からかわれ、
「ヴィヴィは膨れてるし、クリスは無表情で合宿に興味無さそうに見えたし。それでなくても見た目 “こんな” で超目立ってたのに、悪目立ちしてたよな~?」
丸顔に悪意の無い笑みを浮かべつつ、グサリとトドメを刺してくる高四郎。
「ヴィクトリアさん、何故膨れてたんです?」
皆の様子に興味を引かれたらしい男性アナの追及に、
「う゛ぅ……。ノ、ノーコメントで……」
若干 頬を赤らめたヴィヴィは、誤魔化す様に車窓に視線を逸らした。
公共の電波の前でなんて、言える筈が無い。
毎年 例え3日間でも、大好きな長男と離れ離れになるのが嫌で散々ゴネまくり、
最後はぶち切れた母・ジュリアンに車の中に放り込まれ、野辺山へと連れ去られていただなんて。
皆に興味津々の眼差しを向けられる妹を見かねてか。
「ヴィヴィは、家が大好きで……。毎回出発する際に「行きたくない」って、泣いて……」
そんなフォローになってるんだか いないんだか、微妙な理由を告げたクリスに、
同期の4名はポンと両手を打ち、納得のいった様に頷き合う。