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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

「…………は…………?」
きっかり10秒後、怪訝そうな1音を発したヴィヴィの表情は、
言うなれば、
街中で「貴方の為にお祈りをさせて下さい」と宗教家に声を掛けられた時の様な、
腕に(神頼みか)沢山の数珠を着けた、自称コンサルタント業の男に出くわした時の様な、
先の尖った革靴を履いたチャラ男美容師に「俺に任せてよw」と髪を切られる時の様な、
要するに、一言で言い表すならば、
“胡散臭い”
――に尽きた。
『俺と “ゲーム” をしようか』
匠海がもち掛けた その意味不明の申し出に、
手にしていたマグカップがゴトリと大きな音を立て、ダイニングテーブルに下ろされる。
「……馬鹿にしてるの……?」
「どうして?」
「 “ゲーム”……? 私にとって何一つ有利に働かないと解かっているゲームなんて、受ける訳ないでしょ?」
瑞々しい薄紅色の唇から発せられるには あまりにも不釣り合いな、毒を孕んだ声音。
それを真正面から投げ付けられた兄はというと、意外そうに「そうかな?」と相槌を返してくる。
「ほら、エッグ・ハントはどうだ? お前達、探し物得意だったろう?」
「……エッグ・ハント……?」
訝しげに細い眉を顰める妹の目の前、席を立った兄。
数分後、戻って来たその両腕には、カラフルな卵の玩具が抱えられていて。
「納戸で見つけたんだ。お前達が幼い頃は、庭や砂浜でよく遊んだだろう?」
昔懐かしいそれを久しぶりに目にしても、灰色の大きな瞳は更にその険しさを強める。

