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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
広い空間を回転移動しながら行われる、デベロッペ。
3度繰り返したのち、正面となる海の方を見据え、
全身を上へと引き上げてのアチチュード(軸足で立ち片膝を後で曲げ空中で保つ)を決めようとした、
次の瞬間――
「ふぎゃっ!?」
若干 間抜けな声を上げたヴィヴィの肢体が傾(かし)ぎ、バランスを失ったまま床へとへたり込んだ。
中等部の頃なら易々と踊れていたのに。
これはあまりにも酷い、練習不足も甚だしい。
若干凹みつつ立ち上がろうとした時、静かだった1階フロアに響いたのは、自分を呼ぶ声。
「ヴィヴィっ!」
背後から掛けられた呼びかけに、少し乱れた金の頭は振り向く事は無く。
けれど焦った様子で階段を駆け下りて来た足音は、自分のすぐ隣で止まった。
「大丈夫か? 足捻った?」
心配そうに確認しながら、傍に屈み込んだのは勿論 匠海で。
硬直した様に反応しない妹の脚に、兄の手が伸びる。
「どこが痛い? シューズ脱いでみ――」
「触らないでっ!」
大きな掌が足首に触れるよりも早く、それは細い手によって叩き落とされていた。
妹に邪険に扱われるとは、夢にも思わなかったのか。
はたかれた手はそのままに、珍しく口を閉ざし沈黙してしまった匠海。
1人だけだった先程迄よりも、2人になった途端 その静けさが針のむしろの様に痛くて。
「……グラついた、だけ。どうってことない……」
沈黙に耐えられなくなったヴィヴィは しぶしぶ、不貞腐れた声音で状況を説明した。
「本当に……?」
触られたくないが為の逃げ口上――とでも取ったのか。
心配そうに見下ろしてくる兄の絡み付く視線を断ち切るように、すくっと立ち上がり、
紺のレッグカバーに埋もれそうな薄紅色のトウで、床をトントンと叩く。
「……ほらね」
そう言いながら、難なく両のトウで立ち上がって見せた。
「……良かった。焦ったよ」
心底ホッとした様子で立ち上がった匠海。
まだ寝ていればいいのに、目が冴えてしまったのだろうか。
グランドピアノに近付くと、横長の椅子に腰を下ろす始末で。