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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
2日間に渡る、代々木でのアイスショーの翌日。
東京を発った双子はモスクワを経由し、同日の20:50にロシア第二の首都・サンクトペテルブルグの地に降り立った。
4月22日(月)~26日(金)までの5日間、振付の為に世話になるロシア人振付師――ジャンナ・モロゾワの元へと向かえば かの女史は、
華奢な身体には辛い2℃にも満たない夜の気温に身を縮こまらせた兄妹を、バフンとその胸にハグして迎えてくれた。
時間も遅いため本日の振付は無く、リンク近くの彼女の屋敷でディナーの席を囲めば、
ジャンナのふくよかな口から零れたのは、何故か不満の言葉だった。
「だってね? 「パガニーニやる」って言われたらね、普通はラフマニ想像するじゃない!?」
ウォッカのグラスを握り締めながら主張する振付師に、地元伝統料理のビーフストロガノフをパクついていたヴィヴィは、
「ほう?」とスプーンを咥えながら小首を傾げた。
イタリア人作曲家でありながら超絶技巧を誇るヴァイオリニストでもあった、ニコロ・パガニーニ。
彼の名を聞き最初に思い浮かべられるのは、おそらく 無伴奏ヴァイオリン独奏「24の奇想曲」 であろう。
その中でも24番目の最終曲は、最後を飾るにふさわしい華やかさをもち、
たった16小節の短い主題を提示したのち11の変奏を重ね、終曲に至る。
あらゆる技巧を要求されながらも演奏効果の高い旋律達は、
のちに他の作曲家により「パガニーニの主題による変奏曲」として改作されていく。
リスト、ブラームス、ラフマニノフといったロマン派の作曲家が手掛けた編曲はどれも有名であり。
その中でも抜きん出て万人に愛されているのが、
ラフマニノフによる ピアノとオーケストラのための「パガニーニの主題による狂詩曲」
フィギュアに於いては日本選手だけでも、荒河 静香、高畑 大輔、羽生 結弦と名だたる多くのスケーターが公式戦で用いている。