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どこまでも玩具
第9章 質された前科

 「類沢せんせ、さ」
 煙草の煙を追うように視線を泳がせてから、類沢がこちらを向く。
 「瑞希のことどう思ってんだ?」
 「恋人」
 「からかうな」
 「じゃあ、可愛い弟」
 「はあ?」
 類沢は転がるような笑い声を上げる。
 冗談かどうかもわからない。
 「なら……」
 間をおく。
 眉をクッと上げ、折り曲げた人差し指を軽く噛む。
 何か、迷うような、試すような曖昧な表情をして。
 「玩具って言えば納得する?」
 キラッと。
 光ったのは蒼い瞳。
 オレは口を開けなかった。
 それこそ息も忘れるくらいに。
 だって、その時の類沢は余りに穏やかで、切ない眼をしていたから。
 なにを言うべきか。
 なにを云ったらこの雰囲気を壊さずに済むのか。
 そんなことを考えてしまう程に。
 「なんてね」
 スッと目線が外れる。
 オレは大きく息を吸い、吐いた。
 頭がぼーっとしている。
 なんていう感覚だっけ。
 たった数秒が一時間に感じられた。
 そしてその数秒にオレは気づいてしまったんだ。
 多分、瑞希はまだであろうこと。
 類沢が脚を組み直す。
 煙草を灰皿に押しつぶす。
 微笑を湛えた横顔。
 ―お前には興味無かったんだけどね―
 あの言葉の意味。
 情けないことに、オレは震えた。
 怖いからじゃない。
 寒いからじゃない。
 強いて言うなら、奇跡を見た人間がこういうどうしようもない震えに襲われるのに似ていた。
 確信。
 否定したい気持ちさえ消された。
 類沢が二本目の煙草に口をつける。
 数瞬目を瞑る。
 デジャヴだ。
 保健室でこの顔を見たことがある。
 あぁ、やっぱり。


 類沢せんせ、さ

 瑞希のこと

 好きなんだろ


 さっき訊きたかった質問。
 だけど、知らないフリをしよう。
 だって、まだ信用してねぇし。
 でも瑞希が家に入れたのは、きっと瑞希も気持ちが傾いてるから。
 だから知らないフリをしよう。
 誰も傷つかぬよう。
 過去を掘り返して結論を急がぬよう。
 忘れんな。
 類沢せんせ。
 あんたがしたこと。
 あんたがしてくれたこと。
 息を吐く。
 アカ。
 この場にいたら何て言う?
 唯一こいつの正体を目撃していないお前に訊きたいよ。
 だから、すぐ迎えに行く。
 「アカの父親の住所突き止めた」
 この教師を利用してでも。

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